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ウォーゲーム成分入り雑記

世紀末覇者、Viceroys、Combat Commander: Europe | TSS例会 (2019/05/25)

 たしか去年の夏か秋かその中間のころにKMTさんのお宅に4人のゲーマーが集まることがあって、なにをプレイするのか、あるいはそもそもウォーゲームを遊ぶのかどうかも未定のまま雑談するうちに僕がツクダのシルクロードがおもしろいという話をして、おなじくツクダの大航海時代へ話題が飛んで、やがてテーマつながりで Task Force Games の Viceroys に着地した。実物をその場で見せてもらい古地図風の――そのときはそう思ったのだけどのちに本物の古地図を流用したんだと知った――マップや朴訥としたコンポーネントに一目惚れ。いずれプレイしましょうと近所のインド料理のお店でナンのおかわりを頼むか自重するか悩みながら約束したのだった。
 ちなみにその日は午後からゆるゆると GMT Normandy' 44 になだれ込んだものの、僕の担当したカーン方面のドイツ軍がTraJanさんのイギリス軍にわずか2ターンでドカンと抜かれたあたりでいい時間になっていておひらきにした。ゲーム会に対する僕のスタンスというか理想のようなものは常にブレていて、参加者全員がばっちり準備してきてほしいときあるし、少なくとも自分はルールを読んでおいてできればソロプレイもしておきたいときもあるし、顔を合わせられたらそれでもう実質的勝利かと思っているときもある。最近はおおむね真ん中の気持ちでいるのだけれど、このときゆるっとしたおかげで Viceroys に出会えたのだからウォーゲームというのは懐の深い世界で、僕もそういうでっかい男になりたいものです。
 それから半年くらい経ち、先週末のTSS例会でついに対戦が実現した。本題の Viceroys のほかにもいくつかのウォーゲームをプレイできて盛りだくさんの休日だった。詳細は当日コンポーネントの準備からインスト、ゲームの進行まで全面的にお世話になったAMIさんのブログをご覧ください:
solger.sblo.jp
 AMIさんに朝駆けをお願いして Viceroys のメンツが揃うまでに軽く1ゲーム、とはじめたのがツクダの世紀末覇者。たぶん6、7年くらい昔に、いや北斗七星にかけて7年前ということにしよう、Twitter上でAMIさんとこのゲームについてやりとりしたことがあって、覚えていてくださったのだった。

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力こそ正義、いい時代になったものだ
 僕の希望で、AMIさんケンシロウ対takuシン。闘いの前に行う死兆星判定の結果、ケンシロウの目に、北斗七星に寄り添うようにして輝く蒼星が見えた。見えたからなにか不利な修整を受けるとかゲーム上の効果はとくにないんだけれど、プレイヤーを世紀末へぐぐっといざなう名ルール。これまで遊んだウォーゲームの中でいちばん好きな◯◯判定かも。次点はウォーゲーム日本史 討入忠臣蔵の捻挫判定。
 ユリアを奪うべく現れたシンの南斗獄屠拳と応じるケンの北斗飛衛拳がぶつかる。宙空に交錯するふたりの姿が目に浮かぶが両者相手の技を右腕で受け止め、肉体へダメージを与えるには至らない。つづいて南斗千首龍撃、北斗百裂拳とどちらも連撃系の奥義を繰り出す。きっと僕らの目にはとまらぬ早さで突き合う彼らは一進一退、ケンが詰めればシンが引き、シンが踏み込めばケンが躱すが、先に相手をとらえたのは南斗孤鷲拳伝承者だった。破壊的な三連撃がケンシロウの頭部を貫き、決着。執念の違いを原作とはまた異なる苛烈さで見せつけてくれてシン好きの僕にはたまらない一戦であったけれども、第2ターンのケンシロウはチットの引きが悪かったそうで、死兆星判定が示したとおりに闘う前から宿命づけられた結末であったのやもしれません。

 一人また一人と参加者が集まってきたお昼ごろから本日のメーン・イベント Viceroys に着手した。担当国はランダムに決めて、AMIさんポルトガル、KMTさんネーデルラント、TraJanさんイスパニア、takuイングランドとなった。展開はAMIさんのブログに詳しいのでここではイングランド担当としてこのゲームの感想を中心に。

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AMIさん謹製の和訳カードや各種プレイエイドがものすごい
 たいへんおもしろい作品でした。本国で航海の準備を整え、チットプルで順を決める手番が回ってくるまで、マップ状況と他国の動向を見ながらそのターンの計画を練るのが楽しい。僕がまだこのゲームに慣れていないということもあるだろうけれど、行動可能な海軍スタックが増えるにつれ選択の幅が広がるので待ち時間が退屈にならない。チットのアヤで、目をつけていた沿岸に先乗りされるとくやしく、未踏の地域にいち早くたどり着けるとうれしい。
 探検隊が発見判定に成功すると産物や鉱山、王国・帝国といった文明がランダムに見つかる。一見大ざっぱな処理に見えるけれど地域ごとに適用される修整が絶妙で、王国の周辺に鉱山や価値の高い産物が固まっているとか、逆に不毛な土地では大したものが見つからないとか、自然とそれっぽい分布になる。一方で、引きさえよければ極寒の南極大陸に帝国を築くやべーやつらが見つかったりするなど、学研プラス刊行の学術誌『ムー』が40年の長きに渡り挑みつづけている世界の謎と不思議の一端に肉薄できる可能性もある。こういうおおよそ収まるところに収まりながら、ときおり幸運または不運がかさなり突飛なことが起きる、揺らぎのあるデザインが僕は大好きです。
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ゲーム終了時の世界
 南米の植民地に握った2山の金鉱を資金源に探検を進め、喜望峰を足がかりとしてアジアをめざした。我らがジパングに帝国を見つけ支配下におくのが目標であったのだけれどジャンク船を乗り回す海賊団に手を焼いて、しかたなくインドで妥協しているあいだにゲーム終了、直前のターンでマゼラン海峡、知られざる大陸の発見と入植に成功したポルトガルが1位となった。
 今回は早期に決着したこととAMIさん以外の3名がまだ不慣れであったことからプレイヤー同士の直接的な殴り合いは発生しなかった(開始時に結んだ平和条約が一度の更新を挟み最後まで有効だった)。とはいえゆるやかなインタラクションは常にあるし、そうでなくても他国の探検の進捗を「儲かりまっか?」と眺めているだけで楽しかった。先駆者がいると発見や入植の判定に有利な修整がもらえるため、後追いもしたくなる。歴史あるゲームゆえ全体的に良くも悪くもまっすぐなデザインで、もしもいまリメイクしたらもっと洗練されたものになるのだろうけれど、このルールセットだからこそ醸し出せる独特の雰囲気があるんだと思う。ぜひまたプレイしたい。

 Viceroys が終わってもまだ時間に余裕があったので、ひきつづきAMIさんに GMTCombat Commander: Europe を教わった。タイトルとおおまかなゲームシステムは以前から知っていたのだけれど、ちょうど先週の半ばごろにふと興味が湧いて Mediterranean といっしょにオーダーしていたのだった。OCSしかり Air Power ひいては空戦ジャンルしかり、ビデオゲームなら GUILTY GEAR Xrd怒首領蜂最大往生をメインに縦シュー全般と近年こういう「これまで外側から眺めていた領域に踏み込んで「好き」が増える」という経験がつづいていて幸福度が高い。好きとか嫌いとか最初に言いだしたのは誰なのかしら、それは分からないけれど、遺憾ながら人生はあまりにも短いのでなるたけ「好き」の方へ気力体力を注いでいきたいといつも考えています。

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 AMIさんのインストと錦大帝さんのアシストを受けながら入門編の独ソ戦シナリオを2戦。1戦目はAMIさんのドイツ軍にしっかり押さえ込まれてしまい局面を打開しようと無理に動いて損害がかさみ敗北、僕の希望でふたたび攻撃側ソ連軍をもたせていただいた2戦目では最序盤から引き運に恵まれ首尾よく好位置を占めたあと狙撃兵のピンズドスナイプもあってリベンジを果たすことができた。
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 想像以上に楽しいゲームでした。どんな行動をとるにも対応するカードが必要という本作の根幹をなすルールはWeb上の記事を読んで事前に知っていて、場合によっては長らく一歩も動けないとか目と鼻の先の敵を撃てないとか、やりたいことがいつでもやれるわけではないままならなさを僕は絶対楽しめる直感があって、それはそのとおりだったんだけど、プレイしてみてさらに興奮したのがそのままならなさは相手もおなじく抱えているということだった。
 そりゃそうだろうと思われていると思います、すみません、でもこのドキドキ感はぜひとも実際に味わってみてほしい。敵は射撃カードを持っているのか? なければ大胆な移動ができる。移動カードは? あると思ってこの射撃カードは残しておこうか。回復カードは? あるいはここは日和らず勝負を決めにいく瞬間なのかも……などなど、ひりつくようなジレンマの連続でゲームが運動していく。最初に引く3枚のチットによってマップに印刷されているシナリオ間で共通の各勝利条件へクスの価値が変動し、そのうち1枚は公開情報、2枚はそれぞれ自分だけが確認できるという揺らぎを与えるルールも好印象だった。初期配置との兼ね合いでどちらかが極端に有利になってしまうことがないかと心配したのだけれど、そうはならないようなマップデザインになっているとのこと。すごい。
 と、この文章を書いているあいだにショップから発送の連絡が届いた。今回のプレイでは、あるモラル値の敵に対しどれくらいの火力を集めればそれなりに効果が見込めるのかいまひとつ感覚がつかめなかったので、なるはやでソロプレイして体得したいと思う。