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ウォーゲーム成分入り雑記

Brazen Chariots - Operation Crusader: Full Campaign #1 | ソロプレイ (2019/05/26-06/22)

 Brazen Chariots のVASSALモジュールが2~3週間後に正式リリース予定であると CSW Form のBCSトピックを読んで知ったのはSEKIRO2周目の赤鬼かまぼろしお蝶を倒したあたりのころのことで、じゃあ竜の帰郷エンドを見てから北アフリカへスライドしようかと目論んでいたところ、なんのかんのでまだ谷とか村とか葦名の国を周遊しているあいだに ver.1.01 がリリースされ、ならばと修羅ルートへ切り替えたものの柔の剣の使い手にしっぽり斬り伏せられまくっているうちにアップデート(最新版は ver.1.02)まで来てしまった。
 もちろん「来てしまった」というのにネガティブなニュアンスはなくて、世の中にはおもしろいゲームが多すぎるといううれしい悲鳴のたぐいであったり、Battalion Combat Series の活発さを眺めているよろこびであったり。とくに冒頭にリンクしたフォーラムは溌剌としていて、ほとんど毎日誰かしらのポストがあり、Dean Essig や Carl Fung はじめデザインする人とプレイする人とがイーブンな立場で話し合っている。プレイヤーの抱いた疑問がきっかけになって議論が進み、さっそくエラータや明確化に反映されるのもよく見る流れで、たとえば「バトルアクス作戦シナリオにおける増援、第11インド歩兵旅団は、第2QOCH大隊だけ断崖の反対側に登場するから Safe Path が通らずいきなり Isolation Effect を受けてステップロスしてしまうのだけれど、これは意図されたものか?」という質問に対しリサーチ担当 Carl Fung が戦況図を添えて史実どおりの設定である――第11インド歩兵旅団は断崖を挟み二手に分かれてハルファヤ峠を攻撃した――と説明、そのうえで「2 QOCH は(通常のHQに加え)補給源に向けて Safe Path を通してもよい」との文言をエラータに追記するということがあった*1
 必須のチャートが含まれていないとかカウンターにミスプリがあるとか、こんなのは大小ともかくウォーゲームにはつきものだし、ゴリゴリのクオリティ・マネジメントを全うするには各種リソースが足りていないんだろうときっと承知しているし、そしてなにより自分の好きなゲームをさらに深く好きになりたいというような、そういうポジティブなモチベーションが書き込みたちから感じられてすてきに思う。ただ、ルールブックが読めるくらいの英語力だから僕にはたいていの会話が教科書的な口調でフレンドリーに交わされているように見えるけれど、実はピリッとしたりバチバチッとしたりしているときもあるのかもしれない。

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初期配置
 そういうわけで本作のメインディッシュといえるシナリオ 5.7 Operation Crusader: Full Campaign を鋭意ソロプレイ中である。期間は1941年11月19日〜12月9日の全21ターン。Tobruk と盤端補給源を Primary / Secondary Road でつないだ瞬間に英連邦軍の勝ち、それを最後まで阻めば枢軸軍の勝ち、という竹を割ったような勝利条件がこころよい。
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Tobruk 周辺(南京錠アイコンが Locked)
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第1ターンの両軍 Order
 前回の Operation Battleaxe と同様に Tobruk を取り巻く両軍は Locked でセットアップされる。英連邦軍はいつアンロックして包囲の内側から脱出を図るのか、作戦の進捗をもとに決断しなければならない。北上してきた第30軍団とともに包囲環を挟撃するのがひとつの理想であるけれど、もしも彼らが思うように前進できなかったら? アンロックを遅らせているうちににっちもさっちもいかなくなってしまうかも。また、単に Tobruk 目がけて突進するのでは枢軸軍を迷わせられず、第15、21装甲が立ちはだかることになろうからせめてどちらかの矛先をそらせつつ解囲を試みたい。あるいは枢軸軍の方にもオプションはいろいろあって、 いっそ2個装甲師団を投入して Tobruk を攻め落としてしまおうかとか、第1ターンの Order 検討からもう手に汗握る感じがする。
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第5ターン終了時
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マップA拡大
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マップB拡大(右上で 7 Arm が壊滅)
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マップC拡大
 ゲーム開始から(現実時間で)およそ1ヵ月が経ち、いまは第6ターンの Order を考えているところ。どちらが優勢であるかは正直よく分からない。3枚のマップそれぞれで戦いが起きていて、左側から順にいくと、マップAでは 22 Arm、22 Gds、1 SA が Ariete をもう一歩のところまで追い詰めている。第1ターンから高いARと88ミリ砲を頼みに孤軍奮闘していた Ariete が、RECAM と Trieste の救援を得て地形のある Tobruk 周辺まで無事に退けるかどうか。マップBでは Sidi Rezegh や DAK Dump を狙った Spt、7 Arm が 15 Pz と 21 Pz のツープラトンをモロに食らってしまい目下再編中。とはいえある程度の損害を強いることはできたので、これに懲りず、補充能力の差(各ターンに得られる期待値は、枢軸軍:約2.3ステップ、英連邦軍:約5.7ステップ)を押しつけていきたい。マップCの趨勢ははっきり英連邦軍に傾いていて、4 Arm の裏回りと合わせ NZ Div と 4 Ind がリビア-エジプト国境沿いの地雷まみれの陣地線を突破、Fort Capuzzo と Sollum を押さえ、Halfaya Pass で踏ん張っている Bach を包囲した。枢軸軍は Savona に陣地を放棄させたがほうほうの体で逃げ出した感じで、今後戦況に寄与できるかは微妙なところ。

 2ヵ月間 Brazen Chariots と向き合って、ようやくBCSの戦い方がすこぅしずつ分かってきた気がする。シリーズ前々作 Last Blitzkrieg、前作 Baptism by Fire もいくらかプレイしたけれども、その独自のWW2観に振り回されるばかりでいた。本作は戦場の大部分が開けた地形で機動の自由度が高く、補充能力含めた数で攻める英連邦軍と2個装甲師団を主軸に質で守る枢軸軍という鉄板のコントラストが鮮やかで、BCS入門にぴったりと思う。
 Dean Essig が生んだ作品に共通して見られる「防御側こそ攻撃すべし」という思想があるが、Brazen Chariots はそれを地で行くウォーゲームだ。ただ戦線を張って待ち受けるだけでは事態は悪化の一途をたどる。恐れず日和らず、攻め寄せてくる敵を逆襲しつづけることでそのモメンタムを失わせねばならない。ガードやステップ回避に徹して大振りのスキに差し込むのみより、斬られるリスクを背負って弾き、自ら敢然と斬りかかりつづける方がむしろ勝利への近道であるというSEKIROの剣戟システムと似ている(こちらはビデオゲームで全然ジャンル違いなんですけど、相当おもしろいんでオススメです、SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE)。

 VASSALでちくちく進めるスタイルにも慣れてきて、残業や寄り道(9割ゲーセン)で平日はだいたい22時過ぎに帰宅しているのだけれど、フォーメーション単位で活性化するシステムだから「今夜は第7機甲旅団だけ」みたいに細かくキリよく楽しめる。モジュールの公開に向けて尽力くださったすべての人に今日も感謝でダイスロールです。

*1:#9753の書き込み以降を参照