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ウォーゲーム成分入り雑記

To Take Washington - The Monocacy and Fort Stevens Campaign | 浜松ボードゲーム同好会 (2020/06/20-21)

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 先月は浜松ボードゲーム同好会の特別企画「24時間ゲーム会」におじゃました、ゲームをひろげっぱなしにできる会場で土・日それぞれ12時間、計24時間遊びつくそうという体力勝負な企画で、ふだんの例会ではプレイできない長時間系タイトルが複数ならぶどっしりとしたゲーム会だった、同会はボードゲーム主体の日とウォーゲーム主体の日をもうけて活動されており、僕はいまのところ後者の定例会しか顔を出せていないのだけれど、今回はボードゲーマーの方々の参加もあってとてもにぎやかな2日間だった。
 プレイしたゲームは南北戦争の会戦を連隊規模・1ターン15分(夜間ターンは30分)・1ヘクス110ヤードというスケールでシミュレートする Line of Battle シリーズの最新作 To Take Washington で、同シリーズは第1作 None But Heroes 発売からすでに10年近く経ってしまった今年の3月のはじめのころにようやくソロプレイにこぎつけたところこれがたいそうおもしろく、第2作 Last Chance for Victory や前シリーズ作 South Mountain を入手したりして Twitter 上で騒いでいたら、同会主宰の信長さんがお声がけくださり対戦の運びとなったのだった。
 本作のテーマはそのサブタイトル "Jubal Early's Summer 1864 Campaign" が示すように、1864年6月から7月、南軍の Jubal Early が Shenandoah 渓谷や Potomac 川を越えて Washington D.C. の間近に迫った戦役で、なかんずく Battle of Monocacy と Battle of Fort Stevens に焦点を当てている。前者はフルマップ2枚、後者は1枚の範囲に切り取られており、両者をジオメトリックにつなげることはできないけれど、キャンペーンでは前者の戦いの結果が後者の戦いの初期条件を決定するという手法で間接的に連結させられるというので、今回はその The Monocacy and Fort Stevens Campaign をプレイした。

Battle of Monocacy(64年7月9日)

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セットアップ

 まず、南軍プレイヤーはキャンペーン開始前に本戦役の目標を Baltimore または Washington のどちらにするか秘密裏に決める。
 史実どおり連邦首都をめざすのであればこの戦いの結果に応じて南軍が Fort Stevens に到着する時刻が定まる、良い結果を得られれば時刻が早まり首都突入の可能性を高めることになる、結果の良し悪しは南軍が終了条件を満たすまでに要した時間と投入した部隊の数とをもとに判定するが、もちろん所要時間は短ければ短いほどいいし、投入部隊は少なければ少ないほどいい。それらはトレードオフの関係にあるから、南軍プレイヤーは計画と戦況に鑑みて適切な部隊を戦闘へ投じていかなければならない。終了条件は2種類あって、どちらかが満たされれば(北軍第8軍団長 Wallace が撤退を決断したものとして)即座にシナリオ終了となる:ひとつは Monocacy 川にかかる3つの橋をすべて奪取すること、もうひとつは北軍ユニットを少なくとも7つ Wrecked *1 にすること。
 一方 Baltimore を目標にした場合は先述の結果の良し悪しがそのままキャンペーンの勝敗となり Battle of Fort Stevens をプレイすることはない。おもしろいルールだと思うけれど「腰を据えてキャンペーンやりましょう」と各自準備を進めていざ当日、「目標は Baltimore でしたのでこれでおしまいです」というのはちょっと勇気がいる気がする……が、だからってわけではなく(ぜんぜんないではないけれど)「やっぱり首都を落としたいでしょ」という思いから Washington を目標に選んだ。
 事前に立てておいた計画は下記のとおり:

  1. McCausland の騎兵旅団が Worthington Ford で Monocacy 川を渡河し周辺の安全を確保、爾後 Gordon 師団の右翼を支える
  2. 主攻:Breckinridge 軍団がそのあとを追う、うち Gordon 師団に Monocacy 川を渡らせ、Georgetown Pike まで北軍主力を押し込む
  3. 助攻:Rodes 軍団は初期配置から Ramseur と Rodes の位置関係をスワップ、爾後 Rodes 麾下の部隊で Monocacy Junction を圧迫する
  4. 砲兵は Monocacy 川北岸の丘の見晴らしのいい地点に展開、対岸の Gordon の攻勢を支援する
  5. 以上をもって「北軍7ユニット Wrecked」の条件を満たす

 シナリオの結果は4段階あって、僕は南軍にとって2番目に良いものをめざした、したがって「2個歩兵師団・2個砲兵大隊・1個騎兵旅団」で「5:45 pm までに終了条件を満たすこと」が必要だった、もしも作戦が芳しくない推移を見せるのであれば早めに1個歩兵旅団を追加投入する予定でおり、その場合 7:00 pm までに終了条件を満たせば3番目に良い結果を得られる。最北の橋 Jug Bridge は狙わないことに決めた、戦線が長くなって Command Range の管理に手を焼くだろうことと、限られた兵力ですべての橋を奪う自信がなかったことが理由だ。

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事前計画メモと当日発行した命令書

 7月9日 10:00 am より Early は計画に則ってせっせと自由記述式の命令書を発行していく──今回の対戦では Command & Control ルールを導入することと取り決めていた。導入しなくてもじゅうぶんゲームは成立するし、プレイアビリティを落とさずにすむという利点もあるけれど、Essig 先生がルール本文中で "A player’s losses will be much higher if the Command system is not used." *2 なんて語っておられる("much" の太字は原文ママ)ように導入した方が断然おもしろい。『やんなきゃ人生損してる』とまでは言わないけれど、Command & Control 付きの Line of Battle はあなたの QOWL (Quality of Wargaming Life) をきっと一段引き上げてくれるに違いない。

The basic idea is that while you know what you’d like to do, you won’t be able to do it as quickly or as coordinated as you want. *3

 いろいろと細かい、そのくせプレイヤー間で感性の同調が求められるだろう記述の散見されるルールだけれど、眼目は上記の引用文にあり、そのアイデアはいたってシンプルで受け入れやすい、つまりたくさんのウォーゲームたちがあの手この手で表現しようとしている戦争のままならなさを、もっとも実直なやりかたで実装しようという企てのひとつが本作の Command & Control ルールだ。軍隊は命令がなければ動けない、けれどその命令は即座に書き上がったり到着したりするのではないし、受け取った方もその意図を噛み砕きさらに下位の組織へ伝えなければならなくて、そうしてやっと軍司令官=プレイヤーの思いのもとに行動しはじめた部隊は、いつ臆病風に吹かれたりなんなりして前進をやめてしまうか分からない──もっと抽象的な手法の方がプレイアブルで、ゲーム全体の挙動を見たとき、むしろより筋良くそのプロセスをモデル化できてしまうことがあるというのはウォーゲームあるあるだけれど、ふつうダイスの一振りやカード、チットの一枚に集約されるものを解体して味わわせてくれるゲームには得難い魅力がある。

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 Early が命令の発行にもたついたり部下の Rodes や Breckinridge が届いた命令を受諾してくれなかったりしつつも、各師団がおおむね所定の位置につけるあいだに Initiative *4 をとった McCausland の騎兵旅団が Monocacy 川を渡って戦端をひらいた、対する北軍 Wallace はカービン銃を装備した強力な騎兵でその前進を滞らせつつ歩兵を川沿いの丘に展開、南軍主力を迎え撃つ態勢を整えていく。

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 川越しに撃ち下ろせる地点に据えた砲兵の射撃が好調で、要衝 Monocacy Junction 周辺の敵をちまちまと削る中、満を持して Attack Order を accept した Gordon の歩兵師団が浅瀬を渡って北軍歩兵と銃火を交えはじめる。が、ここで南軍に悪いニュース。これから Gordon の右翼を支えるはずの McCausland が Fluke Stoppage 判定に失敗、攻撃を中断して敵の小火器による射撃を受けないところまで勝手に引き下がってしまった。ひとたび Fluke Stop すると、かなり低い成功率の Attack Recovery 判定をパスするか2400時ターンになるまで Attack Order をいっさい受けつけなくなる、Battle of Monocacy は日をまたがないシナリオだからもはや彼らの力はまず借りられない。
 騎兵隊の援護は受けられなくなったものの、もともとの兵力差を頼みに Gordon は Georgetown Pike へ向けて着実に前進していく、Fluke Stoppage 判定に有利な修整を加えるべく後置している1個旅団も機を見て前線へ送りこむ構えだ、あるいは早期決着をもくろんでもっと果断な攻勢に出るべきだったのかもしれないけど、ここで受けた損害は次戦へ引き継ぐことになる──Monocacy の戦いのあと Early は再編の時間も惜しんで Stevens 砦へ行軍した──から踏ん切りがつかなかった。

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Fluke Stop しちゃった Gordon

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Monocacy Junction を巡る攻防戦

 遅れて攻撃をはじめた Rodes 師団の助力もあり、やがて北軍主力を縮こまらせることに成功した Gordon は、しかしここぞという決めどころで Fluke Stoppage 判定に失敗。これで Monocacy 以南の作戦は不本意ながら頓挫し、兵力の追加投入を決断するかこのまま Rodes の戦果に期待するほかなくなった Early は結局どっちつかずの態度をとってしまう──想定外の損失を出しながら2時間ほど Rodes に戦わせたあと、もうあと一歩押し切れないのに我慢ならず Echols 師団の一部の投入を決定するが、その Attack Order が届くころには Rodes が終了条件を満たして北軍司令官 Wallace は飄々と撤退していった。じっさい寄与できたかどうかに関わらず Attack Order を下した時点でそのフォーメーションは作戦に commit したものと扱うため、Battle of Monocacy の結果は Level III で、Early が Stevens 砦に到着するのは 4:00 pm ということになった。

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シナリオ結果一覧表 *5

 次戦 Battle of Fort Stevens のセットアップと増援部隊の整理を済ませたころには21時近く、ゲーム会初日はここでおひらきとなって、参加者のうち4名で連れ立って晩ご飯を食べに行った、なにが食べたいかと訊かれた僕は例によって『さわやか』を希望したんだけれど、すくなくても近場の店舗は昨今の情勢に漏れず時短営業になっていて叶わなかった、それからしばらく夜の浜松をさまよって、公式サイトを見るかぎりずっと通常営業を貫いているらしい豪毅なカフェ『ざぼん』に流れ着いた、この2日間ディセントのオーバーロード役を務めていらした学生ボードゲーマーさんがあんかけでオムライスでとんかつトッピング(だったかな?)という企画の主旨に沿った重量級メニューをたいらげるのをうらやましく眺めつつ、ホッとする味のミックスピザを食べてあしたに向け英気を養ったのだった。

Battle of Fort Stevens(64年7月11-12日)

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セットアップ

 前述のように Battle of Monocacy はこの戦いの初期条件(南軍の損失程度および到着時刻)を定めるための前座であって、本シナリオの結果によってキャンペーンの勝敗が決まる、勝利条件は「シナリオ終了時に Army of the Valley の HQ が Washington 内のいずれかのヘクスに存在し、かつ盤端まで連絡線をつなげられれば南軍の勝ち、それ以外は北軍の勝ち」という率直なもので、当時 Early がどのくらいその可能性を視野に入れていたのかどうかはともかく、あっけらかんとしていて気持ちがいい。
 Battle of Monocacy のときほど僕は事前の計画を持たずにこの決戦にのそんだ、それ以外の準備時間で手一杯だったという事情もあるけれど、特別ルールで進撃路が 7th Street Turn Pike 沿いに限定されているからもうガチンコで Stevens 砦の守備隊と撃ち合うよりないと思ったのと、敵が待ち構えている陣地へ正面から突っ込んで幸せになれるはずもないがじっさいどんなふうにあえなく弾き返されてしまうのか、本作のゲームシステムで味わってみたいという興味があった。そういうマゾヒスティックな欲求を安全に充足してくれるのはウォーゲームのチャームポイントのひとつである。
 とはいえ今回のように Command & Control ルールを導入したプレイにおいては Attack Recovery に関する課題に頭を(たのしく)痛めることになる。というのも、Attack Order で与えられた目的を達成した師団は──Fluke Stoppage 判定に失敗した場合と同様に──Attack Recovery 判定に成功するか、2400時ターンを迎えなければ新規の Attack Order を受けつけなくなってしまうのだ。Attack Recovery 判定の成功率は低く、つまりある日ある師団が遂行できる攻撃命令はひとつだけ、と覚悟しておいた方がいい。窮屈なルールだな、と一読して感じたけれど、自分に置き換えて考えてみるとたしかに一仕事終えたらその日はもう流しでええやろ……という気分になるのでこれは理に適ったルールといえる。Attack Recovery 判定のダイスは「今日はちょっと残業してもらえませんか」とお願いする気持ちで振るのだ。ちなみにただでさえ低い成功率は、その師団が被った損失に応じてさらに悪化するから早々に部下を使いつぶしてしまわないよう要注意。が、そうはいっても戦えば兵はどうしても擦り切れていく、1860年代の働き方改革はかようにいばらの道であるのだ。

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7月11日終了時

 そういうわけで、僕は南軍主力4個師団のうち3個を Stevens 砦の攻略に使い、残り1個をその先へ進むための作戦予備としたんだけれども、ここでひとつ疑問が生じると思う、すなわち「Washington を攻略せよ、という Attack Order を全軍に与えてしまえば余計な頭痛に悩まされないですむのでは?」……たぶん、それは一面正しい、たとえば「西の方を攻撃せよ」というようなあいまいでどうとでもとれるような命令文は禁止されているが、そのルールが語るところの『あいまいさ』自体にあいまいさがあり、勝利条件を一発でカバーできる遠大な目標を与えてもよいのかどうかは微妙な話で、このあたりはもうプレイヤーそれぞれの感覚にべったり依存する領域だろう。個人的には、そういう言い方は本シリーズの扱う範囲の外側でなされるものであって、Early や Rodes や Breckinridge はそれをどうやって成し遂げるか考えるセクションにある人だと思う、つまり勝利条件を述べる文章を、ゲーム内最上位の HQ に対してより上位の存在から与えられた命令であると解釈する。ただしこれはもちろん僕個人の Line of Battle 感覚に過ぎないから、みなさんはみなさんの感覚でプレイしていただきたいと思う。

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到着スケジュール *6

 Stevens 砦に隣接する Slocum 砦で小競り合いが起きたのを除き南軍は縦隊を組んで到着した部隊の展開に1日目を費やした、上表のとおり 5:00 pm から1時間(4ターン)おきに1個師団ずつ歩兵がやってくる状況で、焦って攻めると側面が疎かになるのではないかと心配したためであるけど消極的に過ぎたかもしれず、当初手薄に見えた Stevens 砦は、首都の危機を救うべく 3:00 pm に Washington を発した北軍の新兵たちによってその日のうちに固められてしまった。両軍の砲兵が散発的に撃ち合っていると日没、Early は夜のあいだ司令部にこもって来たる翌日の攻勢のための Attack Order をしこしこしたためていく。昼間ターンと異なり夜間は発令のための Command Roll が不要で確実に配下の Leader のもとへ命令書が届く、しかしその命令が対象の Leader に accept されるかどうかは日が昇ってみないと分からない、そしてこちらは Command Roll が要るのでいつまで経っても動きだしてくれない可能性がある。不安である。

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 2日目がはじまり、その不安は半分的中した。Rodes と Ramseur は命令にしたがい Stevens 砦に向かって前進を開始したが彼らの側面を援護する任を負った Echols が頑として動かない、なにか気に食わないことでもあるのか Command Roll にコケつづける。GCACW シリーズにおける突撃の指揮判定で芳しくない目を振り一部のユニットしか参加できず予定のオッズが立たねェ、っていうあるあるのシチュエーションは、たとえばこういう事情を表現しているわけで、GCACW では司令官の資質(Command Value)に結果が左右されるからついつい彼の──本作では Early の──せいにしてしまうけれど、「いやいや、俺はその気なんだけど Echols が聞いてくれないんだよ」という思いでいるのかもしれなくて、もっといえば Echols だって本人はよくても副官の反発やらなんやらに悩まされているのかもしれず、なんにせよ強烈な縦社会の中でいつも板ばさみな管理職の悲哀がある。ポートレートのひとつもない、名前と能力値、所属と階級を示す星印の描かれた無骨な Leader カウンターから人間くさいにっちもさっちも感が立ちのぼってきて愛おしい。2から12のいずれかの値を正規分布にしたがってランダム生成する機械的な行為に人の逡巡や懊悩を透かし見る、なんていえばちょっと格好つけすぎだけど、そういう肌ざわりのするウォーゲームが僕は大好きなんだな。

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 それから10ターンくらい、ようやく動きだした Echols があっさり Fluke Stop してしまうという残念な一幕もありつつ、Rodes 軍団と Stevens 砦守備隊との至近距離の撃ち合いがつづいた。基本的に強 ZOC なシステムだからいったんずらりと接敵すると作戦的余地はおおむね埋め立てられ、お待ちかねの一振り入魂タイムに突入、"Make Ready! ... Take Aim! ... Fire!" の号令を心の中で唱えながら射撃やモラルチェックの 2d6 を振りまくることになる。それでたのしいのかというとこれが実にたのしくて、たとえば Opening Volley という名称のいわゆる防御射撃は射程のみをもとに 1d6 一発で損害を求めるとか、このへんのルーチンワークな部分は贅肉を削ぎ落としたシステムになっていてスピーディに進む、一方で Leader の死傷チェック(Wounded / Killed / Captured の3種の結果があるが、ゲーム上はどれも Leader カウンターを除去するだけ)といったケレン味も盛り込まれていてエンジョイ勢の僕にはうれしい。そしてひとつひとつの射撃の効果の分散は大きいが、ずぅっと撃ち合っていればやがて平たくなってきて、ちゃんと不利なポジションにいる方がいつか崩れていくのがうつくしい。
 南軍から攻勢を継続する力が目に見えて失われたころ、現実もいい時間になっていたのでおひらきにした。結果は南軍の完敗、Stevens 砦の一角をなんとか奪ったのが限界だった。砦を前にして退却を決めた史実の Early の判断はやはり正しかったのだった。

 しつこいようだけれどマジでおもしろいシリーズである、積んでしまっている南北戦争フリーク諸氏はいますぐ棚からひっぱりだしてコマを切ろう。To Take Washington なら 6.7 Short, Decisive, and Bloody: Gordon’s Attack が入門シナリオに適していると思う、ユニット数や使用するマップ範囲はお手頃ながら歩兵・騎兵・砲兵の3兵科すべて登場するのでルール習熟にうってつけだ。
 また、今回のゲーム会は事前準備のやり方が当日の満足度を高めてくれたと思う。具体的には、まず本番1ヶ月前に VASSAL を使ってステイホームなインスト会を開いた。その後各自でソロプレイをしてそこで見つかったルールの疑問点はあらかじめ解消しておいて、最後に、diverse な解釈を受け入れる懐深い Command & Control ルールについて Skype を使って認識合わせを行った。こう書くとなにかハードル高く感じられるけど、やってみるとそれがすでにたのしいということを実感する、ウォーゲームの準備ってもうウォーゲームなのだ。

余談(Must Attackの日記より)

下記2点、CSW Forum で質問してみました:

1) Battle of Fort Stevens において、Fort ヘクス内の砲兵が射撃による Morale Table で Rout の結果を被った場合、どうなる?
→ 先日のゲーム会で問題になりました。同砲兵は特別ルールで移動不可かつ Retreat および Loss の結果を無視する(ただし、Charge によって Retreat を強要された場合は除去)とありますが、Shaken や DG にはなるのかとか、Rout だったら Rally Phase に退却不能で除去になるのかとか明記されていなくて分かりませんでした。

2) Attack Order を記述する際、Command HQ の移動先をいずれか1ヘクスで明確に指定する必要があるのか?
→ ルール本文中に「Command HQ を移動させるには Order(Attack or Move)が必要」とあるものの、Attack Order についてはその移動先の指定方法が明記されていません。本文の記述ではその Order が与える Objective に従えば、配下ユニットの進み具合に応じて自由に動かしてよさそうですが、命令書の記述例を見ると "HQ to C20.23." などと具体的なヘクス番号を与えています。

質問からものの数時間で、同シリーズのディベロッパー Chip Pharr さんとプレイテスター Rusty Witek さんから回答が返ってきました:

1) 無視するのは Morale Table の Retreat(b#) と Loss(L#) の結果だけで、Morale State は通常通り変化する。
 → Rout になった場合は、単に Rally Phase 中に退却させないというだけ。

2) 下記2種類の回答があった:
Rusty さんの回答:
 特定のヘクスを指定する必要はない。Command Radius 管理のため、部隊の前進に応じて HQ を進めればよい。
Chip さんの回答:
 特定のヘクスを指定しなければならない。

2 について、Rusty さんと Chip さんとでちょっとした議論がありましたが、Chip さんが「たぶんあなたが正しい、でもそれは自分のゲームだし、私は私の望む方法でプレイするよ :-)」と答えて手打ちになりました。第1作の発売からもう10年近く経つシリーズのルールの解釈でディベロッパーとプレイテスターの意見が真逆であるというのはなんとも素敵です、じっさいこれは些細な問題で、そのときどきのプレイヤー間の合意の上でやりたいようにやればいい。僕はこういうウォーゲームのおおらかさを感じているとき、とてもしあわせです。

*1:額面戦力の半分を超える損害を受けた状態

*2:Line of Battle: Series Rules, v2.0 - Introduction, p.2

*3:Line of Battle: Series Rules, v2.0 - 10.0 Command & Control, p.24

*4:軍司令官から受け取るのでなく、自らに対し命令を与える行動

*5:To Take Washington - 4.0d March on Washington (if chosen)., p.6

*6:To Take Washington - 4.0d March on Washington (if chosen)., p.6