Stackin' Higher

ウォーゲーム成分入り雑記

Line of Battle - Slope Table の話

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 ウォーゲームと向き合っているとしばしば「もっとまじめに勉強しておけばよかったなァ」と後悔する、”Age is just a number!” の理念を信じて思い立ったらいつからでも学んでいこうという気でいるけれどやっぱり脳みその柔軟な時分に素養を高めておきたかった、と感じてしまう瞬間のひとつは高度差アリな LOS ルールと飽くなき格闘をしているときで、判定手法はさまざまあれどつまるところ知りたいのは見えるか見えないかだからほとんどぜんぶのゲームに通底する物の道理があるわけで、そのへんの感覚がきちんと身についていたらゲーム間のちょっとした実装の仕方のちがいにいちいち手間取らないで済んだろうにと思う。
 このごろ僕の中で爆発的に話題のウォーゲーム Line of Battle シリーズは冒頭の画像に示した Slope Table というドープな表を使って LOS 判定をするんだけれど、僕は最初この数字の羅列がいったいなにを語ろうとしているのかぜんぜん分からなかった、ルールを読んでもいまいち腑に落ちず、ソロプレイでじっさいに使ってみてやっとなんとなく分かった。
 具体的には、下記のような手順を踏んで判定する:

  1. 射撃側 / 目標側ヘクス内のもっとも高い任意の1点(ヘクスの中心点ではない)を End Point とする
  2. より高い方を Higher End Point、より低い方を Lower End Point と呼ぶ
  3. Higher / Lower End Point の高度差(行)と距離(列)をもとに Slope Table を参照して値を求める、この値を Overall Slope と呼ぶ
  4. Higher / Lower End Point を結んだ直線上、視線をさえぎりそうな任意の1点を選び、そのヘクスと Lower End Point とで手順3のとおり Slope Table を参照して値を求める、この値を Obstacle Slope と呼ぶ
  5. Obstacle Slope が Overall Slope より大きい場合、視線はさえぎられている
  6. 手順4, 5を満足するまでくりかえし、視線をさえぎる Obstacle Slope がひとつも見つからなければ、晴れて LOS チェック成功

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青線はOK、赤線は遮断

 つまり Slope Table は上図の \theta_1,\theta_2,\theta_3 を求めるための表で、Overall の角度(\theta_1)より Obstacle の角度(\theta_2, \theta_3)の方が大きい場合に LOS は遮断される、と言い換えられる。

\theta=\tan^{-1} \frac{\textit{Diff}}{\textit{Range}}

 \theta は上式で求められる(もちろんググりました)が、Slope Table ではどうやらこれを度数法に変換したうえで3倍しているらしい。本シリーズのスケール(330フィート / ヘクス、20フィート / レベル)をもとにスプレッドシートで計算してみると、端数は四捨五入でオリジナルの表とめでたく一致した。

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Google さまさま(Office を持っていない)

The Slope Table literally gives the “slope” (in modified degrees so that the numbers are clear) from the Lower End Point to both the Higher End Point and the potential Obstacle.

 ……と、本シリーズの成り立ちの一片を垣間見れた気がしてほくそ笑んでいたところ Slope Table の真下の Design Note で上記の説明があることに気づいたが、スプレッドシートをあれこれいじっているのがおもしろかったのでヨシ。LOS 判定に使うだけでなくて、表の値を3で割ればなじみ深い角度が分かるからプレイ中に「ああ、ここの坂は10%勾配かぁ、きついなぁ」みたいに思いを馳せてみるのも一興だ。

ところで

 シリーズルール 4.0 Line of Sight の項のはじめに、Essig 先生はこんなふうにおっしゃっている:

Players are urged to use an “eyeball” determination for 90% of all LOS decisions. This will not be difficult for reasonable players. Application of the whole rule here is presented for those who do not feel comfortable with “eyeballing it” or in the cases that escape easy classification.

「9割方のLOS判定は(Slope Table なんて使わず)目測で判断しなョ、賢明なプレイヤーにはむずかしくないでしょう?」とのことで、言われなくてもそうしているプレイヤーが大半だろうけれど、Design Note でも Play Note でもなくルール本文にこういうことを書いちゃう先生のあけすけさというかぶっちゃけ感というか、フランクなスタイルが僕はありえん好きなんである、Dean しか勝たん。